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21改定、オモテとウラ

0.7%に込められた国の意図

「介護の産業化の推進」と「生産性の向上」を2大テーマとして、法人種別・サービス種別の垣根を超えた横断的な連携を目指す介護事業者連盟。2021年度の介護報酬改定に向け、様々な形で国や政権与党に働き掛け、交渉してきた団体です。新企画「21改定、オモテとウラ」では、同連盟の理事長・斉藤正行氏に、今回の報酬改定の解釈と交渉の舞台裏について論考していただきます。

令和3年度介護報酬改定の全体改定率はプラス0.7%となりました。そのうち0.05%はコロナ対策費として6カ月間の時限措置となります。

コロナ禍による影響の大きさから1%以上の大幅プラス改定を望む声が多かったことは承知しています。それでも私は、この数字は介護現場にとってはそれなりに満足のいく結果であったと感じています。

そう思う最大の理由は、直接交渉していた際に感じた財務省からの強力な圧力です。その圧力は、コロナ禍でありながら過去の改定時にも勝るとも劣らない強さでした。正直、下手をすればマイナス改定すらあり得たのではないか、と感じたほどです。

その圧力を受けながらも、前回改定(0.54%)より上積みできたことは、大きな意味があると思うのです。さらに0.7%が全て基本報酬単位に振り分けられたことにも、大きな価値があると思います。

ここで、今回の改定が実現するまでの経緯を振り返ってみます。

0.7%の引き上げは2020年12月17日の麻生太郎財務大臣と田村憲久厚生労働大臣による大臣折衝で最終決定しました。

その決定に至るまでには、公の場面と水面下の舞台裏とが入り混じった様々な交渉が行われてきました。

昨年10月末に生まれたプラス改定の機運

まず同年10月30日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会で「令和2年度介護事業経営実態調査結果」が報告され、介護サービス全体平均の収支差率が2.4%、前年対比でマイナス0.7%と介護事業者の足元の収益環境が悪化しているデータが示されました。

このデータはコロナ禍による経営影響が生じる前の数字でした。同時に、老健事業による「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業」の速報値が報告され、デイサービスやショートステイ等での利用者の利用控えによる売上減少の実態や、感染防止対策に伴う経費増についてのデータも報告されました。

もともと苦しい経営環境に置かれていた介護事業者が、コロナ禍でさらに厳しい状況に追い込まれていることが、数字で裏付けられたわけです。

もう、プラス改定は不可欠―。この段階では、そんな機運が生じたかと思われました。

財政審が示した、マイナス改定のための3つの論拠

ところが、そのわずか3日後の11月2日、財務省が財政制度等審議会財政制度分科会で、3つの論拠から「報酬改定をプラスとする事情は見出せない」との見解を示したのです。

論拠の1つ目は、コロナ禍で大きな影響を受けている国民に、プラス改定によってさらなる介護保険料負担と利用者負担の更なる増加に繋がるものであり、国民負担を増やすべきではないということ。2つ目は、収支差率で示された2.4%という数字は他のサービス産業の中小企業平均値と同程度の水準であること。3つ目は、コロナ禍での影響は極めて限定的であることでした。

生じかけたプラス改定への流れは、この見解によって強烈にブレーキがかけられた格好となりました。

ギリギリの水面下の交渉、最終決断は…

これ以降、改定をめぐる攻防は、省庁間の水面下での交渉へと移りました。

このころ厚労省の担当官からは、「財務省によるマイナス改定への圧力が相当に強まっている。例年のことではあるが、コロナ禍においてもこれほど強い主張をするのかと驚いています」「主計局より0.1%のプラスも予算に組み込むつもりはないと言われました」など、財務省側の強硬さをうかがわせる声をよく耳にしました。

このままでは、プラス改定の実現は厳しいかもしれない―。そんな雰囲気は介護関係団体にも漏れ伝わったようで、11月から12月にかけて、いくつかの団体がプラス改定の必要性を訴える声明を発表したり、要望書を提出したりしました。当連盟でも、菅義偉首相や田村憲久厚労大臣、麻生太郎財務大臣をはじめとした与党の多くの方々の元を訪れ、プラス改定実現を要望しました。こうした現場の声を受けとめ、最終的なプラス改定の決断を下したのは、菅首相だったと推察されます。

下手をすればマイナス改定という危機的な状況を、ギリギリで覆したのは、現場からの要望を踏まえた与党の政治決断だったわけです。

「コロナ禍での頑張りに報いる」という思いがこもったプラス改定

最後に、0.7%のプラス改定に込められた「国の意図」について考えたいと思います。

当たり前のことですが「国の意図」とは国民全体の総意です。介護報酬改定にしても、国民全体の総意を斟酌しつつ、政府や関係省庁、与野党、関係団体など多くの意向を集約し、決まったものです。それだけに0.7%という数字が背後には、様々な意図が交錯しており、簡単に言い切ることはできません。

そんな中でも、忘れてはならないのは「コロナ禍での改定でなければマイナス改定となった可能性が極めて高かった」ということでしょう。そして、その逆風の中でも、政府や関係省庁がプラス改定を実現させた点にこそ、強い意図が表れています。

つまり、今回のプラス改定は「コロナ禍に伴う窮状にもめげず、頑張り続ける介護の現場に少しでも報いたい」という「国の意図」が形になったものだと言えるのです。

マイナス圧力と大改革が必至の同時改定

言い換えるなら、新型コロナの収束の後となるであろう2024年度の診療報酬との同時改定に向けた議論では、これまでにないほどのマイナス圧力が生じることは必至なのです。また、思い切った社会保障改革を目指す改定となることも間違いありません。

きたる大改革に向け、今回の報酬改定の内容をしっかりと読み解き、先取りした備えを行うことが何よりも肝要です。今後、定期的な論考の中で解説してまいりますので、今後ともお付き合いくださいますよう、お願い申し上げます。

斉藤正行
奈良県生駒市出身。立命館大学経営学部卒業後、飲食業のコンサルティング、事業再生等を手掛ける。2003年以降、グループホームやデイサービスを運営する企業で要職を歴任。2010年には日本介護ベンチャー協会を自ら設立し、代表理事に就任した。18年、全国介護事業者連盟の専務理事・事務局長に就任。20年には同連盟の理事長となった。

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