

結城教授の深掘り!介護保険
自民大勝は、ケアマネジメントに何をもたらすのか
- 2026/02/19 09:00 配信
- 結城教授の深掘り!介護保険
- 結城康博
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2027年度の介護保険法改正や介護報酬改定を控えたこれからの1年間、ケアマネジメントをめぐる政策が変化する可能性は高い。その最中の衆院選で、自民党は歴史的な大勝を収めた。与党が盤石な政治状況を得たことで、制度を大きく動かすことができる環境も整ったといえる。今月は、自民党圧勝が、今後のケアマネジメント施策にもたらす影響を占ってみたい。
更新に伴う「研修」、必須のままで…
まず、注目したいのは「更新制」の廃止である。
2027年度の介護保険法改正に向けた介護保険部会の報告書に、ケアマネジャーの「更新制」廃止が盛り込まれた。しかし、ケアマネにとっては、研修プログラムや内容が変革しても、更新に伴う研修が必須のままでは、本当の意味で負担軽減にはならない。
私は、与野党の勢力が拮抗している政局であれば、「政治情勢によっては、更新に伴う研修が必須でなくなるかもしれない」という、一抹の希望を持っていた。しかし、その希望は、今回の選挙結果によって完全に潰えてしまった。特に、早くからケアマネの更新制度「廃止」などを公約に掲げていた国民民主党の影響力が相対的に低下し、キャスティングボードを握れなくなった点は絶望的だ。
参議院では、与党がわずかに過半数の議席を得ていないから、国民民主党などの協力を仰ぐケースもあるだろう。それでも、衆議院は自民党単独で3分の2を確保している。この状況では、国民民主党もケアマネに関する案件を政局にすることはないのではないか。
国会でのケアマネ関連の議論は希薄化する?
また、今回の選挙では、中道改革連合が壊滅的に議席を減らした。永田町を去った人には介護施策に精通した旧・立憲民主党の議員も複数いる。そのため、国会でケアマネに関する質問回数は減り、議論の熱も冷めていくに違いない。
中には、「野党が国会でどう発言し、熱い議論をしようと、政策実現に影響はない」と考える人もいるだろう。しかし、この考えは短絡的に過ぎる。予算委員会などでの野党の質問が、与党の施策立案や変更につながることはよくあるからだ。
とにかく、野党であったとしても、介護やケアマネ関連の施策に精通した議員が数を減らしたことは、介護業界でもケアマネにとっても、大きな痛手である。
27改正は、介護保険部会による報告書どおりに!
そして、国会での議論が希薄になればなるほど、政策の方向性は官僚主導で決まっていく。
その結果、2027年度の介護保険法改正は、ほぼ社会保障審議会介護保険部会の報告書にそって実施されるはずだ。
当然ながら「住宅型有料老人ホームの入居者へのケアマネジメントの利用者負担導入」は、粛々と実施されるだろう。また、「ケアプランデータ連携システム」の導入を、ケアマネが算定できる加算の要件とする動きは、2027年度の介護報酬改定で、ますます加速化されるはずだ。
30年度の介護保険法改正にも影響
さらに、これだけ与党が圧勝してしまえば、今後4年間は解散がないまま、現状の政治体制が続くだろう。
つまり、次々回の介護保険制度改正(2030年度改正)の議論が予定される2029年中も、この政治情勢が続き、官僚主導の法改正が行われることになる。
そうなると、2027年度の介護保険法改正では見送られた「居宅のすべての利用者を対象としたケアマネジメントへの自己負担導入」も、2030年度には実現してしまうかもしれない。
シルバー民主主義の「終わりの始まり」
最後に改めて、今回の衆院選の歴史的な意義を、少し考えてみたい。
今回の選挙では「手取りを増やす!」「消費税減税」「社会保険料引き下げ」など、現役世代を強く意識した政策が大きな支持を集めた。
言い換えるなら、今回の衆院選は、長年、日本政治の特徴といわれてきた「シルバー民主主義」の終わりの始まりが目に見える形となった選挙だった。中道改革連合や日本共産党が大幅に議席を減らしたのも、チームみらいや参政党が躍進したのも、すべてその表れだろう。 なお、現役世代の中でも、特に数が多いのは、失われた20年と呼ばれる厳しい経済情勢の中、常に理不尽な苦労を強いられてきた「団塊ジュニア世代」である。この世代の人々は、今の高齢者に一定の負担を求めることにためらいなど感じないだろう。むしろ「親の世代は、終身雇用に守られ、右肩上がりの経済成長の恩恵を受け続けてきたのだから、自分の介護の費用くらい、自分でなんとかしてほしい」と思っている人も少なくないのではないか。
こうした社会全体の潮流と意識の変化は、2030年度の介護保険制度改正の議論にも確実に影響を及ぼすだろう。その激流が、ケアマネをめぐる環境をどこまで変化させてしまうのか―。改めて、強い危機意識を持ちつつ、注視していかねばなるまい。

- 結城康博
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。
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