

結城教授の深掘り!介護保険
ケアマネ試験の受験要件、緩和へ。これでケアマネ不足は解消するか?
- 2025/11/20 09:00 配信
- 結城教授の深掘り!介護保険
- 結城康博
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厚生労働省は10月27日の社会保障審議会介護保険部会で、ケアマネジャーの新たな担い手を増やすため、介護支援専門員実務研修受講試験の受験要件を大幅に緩和することを提案した。現在5年となっている実務経験年数を、介護福祉士国家試験の受験要件(実務経験ルート)に合わせて3年に短縮するほか、受験対象となっている国家資格の範囲を広げ、「診療放射線技師」「臨床検査技師」「臨床工学技士」「救急救命士」「公認心理師」を加える方針のようだ。今月は、この緩和策が居宅介護支援の現場にどのような影響をもたらすのか考えてみたい。
真っ先に浮かんだ疑問と失望「なぜ、受験要件を2017年度以前に戻さない?」
厚労省の提案を見て、私が真っ先に思い浮かんだのは「なぜ、受験の要件を2017年以前の形に戻さないのか?厚労省は現実を見ていないのか?」という疑問と失望だった。
表からも理解できるように、第20回試験(2017年)までのケアマネ受験資格では、(1)介護資格+介護等業務経験5年「介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)等の資格を保有していて、5年間介護等の業務に従事した者」(2)介護等業務経験10年「(無資格可)10年間介護等の業務に従事した者」-といった2つの「介護等業務従事者」枠が存在していた。
しかし、第21回(2018年)試験から、この枠が受験資格の厳格化により除外されてしまった。その結果、表の通り、合格者数が急激に減少した。
介護支援専門員実務研修受講試験の合格者(人)
| 第15回 | 第16回 | 第17回 | 第18回 | 第19回 | 第20回 | 第21回 | ・・・ | 第27回 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 相談援助業務従事者・介護等業務従事者 | 3875 | 2607 | 3873 | 2281 | 2505 | 4496 | 133 | 370 |
厚労省「介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等」より作成
今回の緩和の目的が、担い手の確保にあるのであれば、受験要件の2017年以前への復古-突き詰めれば「介護等業務従事者枠」の復活-こそが最も効果的といえるはずなのだ。
「質」は、合格後の研修でも担保できる
厚労省が、「介護等業務従事者枠」の復活を提案しなかったのは、「国家資格有資格者でないルートは、質の担保に悪影響を及ぼす」と考えたためだろう。確かに、国家資格有資格者は専門性が高く、知見も豊富だ。
しかし、国家資格有資格者に限定すると「介護職員として十二分な経験はあるものの、経済的・業務的な理由で介護福祉士国家資格を取得していない人材」は、ケアマネになれないことになる。言い換えるなら、現場で鍛えられた実践知を、居宅のケアマネジメントに生かすことはできない、ということだ。
十分な実践知と経験がある介護職員は、例えば、3年ではなく5年(初任者研修修了)という条件づけで復活させて、受験者の門戸を拡充するべきであった。そして、厚労省が懸念(しているであろう)質の担保については、合格者に対する研修で実現すべきだ。
国家資格の範囲拡大は、ほぼ無意味!
また、受験対象となる国家資格の範囲の拡大についても、その効果には疑問符が付く。
厚労省は「診療放射線技師」「臨床検査技師」「臨床工学技士」「救急救命士」「公認心理師」の5つを新たに加える方針のようだ。
だが正直、これらの国家資格有資格者がケアマネとして働きたいと考えてくれるとは思えない。もしかすると、少数ながらも資格を取るだけ取りたい人はいるかもしれないが、取得した後、その資格を生かしてケアマネ業務に就こうという人は。本当に稀であろう。
その理由は、ごく簡単だ。上記の専門職の年収は、ケアマネのそれと、あまり変わらないか、むしろ上回っているからだ。
現場経験の短縮は評価できるが…
一方、厚労省の提案の中でも、現場経験を3年に短縮する案については、一定の評価ができる。ただ、完全ではない。さらに短縮する規定を設けるべきであったと考える。
具体的には、高齢者もしくか障害者における介護職員に従事した介護福祉士は2年、同様に相談業務に従事した社会福祉士は2年といったくらいまで短縮すべきであったと考える。
私は、社会福祉学科の4年制大学で主に社会福祉士養成に携わっている。これらの学生の中には、社会福祉士を取得してケアマネの仕事に就きたいといった学生も少なくない。
このような若い人材を、早くからケアマネの仕事に就けるルートを構築することが重要だ。卒業して高齢施設など(特養、有料、デイなど)における相談員を2年経験することでケアマネになれる道筋があれば、20歳代の若いケアマネ人材の確保につなげることができるはずだ。
若い人材確保のためにも、さらに踏み込んだ対策を!
定員割れが問題となっている介護福祉士専門学校(介護福祉士養成校)の学生にとっても、「卒業後に2年間の介護職に就けばケママネジャーの途も選択肢に見えてくる」という制度があれば、将来に新たな可能性が示され、介護業界で頑張り続けたいという気持ちも高まるだろう。
読者の中には「社会福祉養成校や介護福祉士養成校の視点から考えて、3年を2年に短縮しても、それほど意味がない」と思う人もいるであろう。しかし、若い学生にとって、1年という期間が短所されるだけでもモチベーションアップのきっかけとなる。
遠くない将来、50歳代、60歳代のケアマネは引退の時期を迎える。その意味でも、団塊世代が全員85歳以上になる2035年までに、早急に多くの若いケアマネが現場で働きはじめてもらわないと、人手不足は深刻化するばかりだ。
まとめると、今回のケアマネ試験の受験要件・緩和策は、多少の効果はあるかもしれないが、これによってケアマネ不足が解消できるとは思えない。さらに踏み込んだ施策を、早急に考えるべきであろう。

- 結城康博
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。
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