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参院選結果を踏まえ、介護・そしてケアマネの環境の変化を先読みする!

20日の第27回参院選で自民党・公明党は議席を大きく減らし、過半数の議席を確保できなかった。野党では立憲民主党が改選議席を維持し、日本共産党は議席を減らした一方、国民民主党と参政党は躍進。れいわ新選組、日本保守党も議席を増やした。既存の政党が衰え、新たな政党が勢力を拡大し、ついに「衆参両院での少数与党」という異例の状況が生じた。この結果は、今後の社会保障政策や、介護・ケアマネジャーに関する施策にどのような影響をもたらすのか―。各党の公約を参考に、大胆に先読みしたい。

今回の選挙の結果、参議院では自民党の議席は101、公明党の議席は21となった。過半数には3議席届かなかったことになる。

一方、野党第一党の立憲民主党は38。次いで多くの議席を確保したのが国民民主党(22)。以下は、日本維新の会(19)、参政党(15)、日本共産党(7)、れいわ新選組(6)、日本保守党(2)、社民党(2)、チームみらい(1)、NHK党(1)、無所属(13)となった。

そして、衆院も参院と同様、与党が過半数に届かない「少数与党」状態だ。

この状況下で考えられる政権のカタチは、次の4パターンのいずれかだろう。

  • 自公で、しばらく現状維持
  • 自公+立憲民主
  • 自公+日本維新の会
  • 自公+国民民主

ケアマネの処遇改善などは期待できるが…-自公で現状維持

今回の選挙結果は、「自公は過半数ラインから3議席を割っただけ」ともいえる。言い換えるなら、自公が無所属の議員を3人追加公認できれば、過半数ラインを確保できる。

石破首相が続投を決定したのも、そのあたりを鑑み、自公だけで、なんとか政権運営を継続できると踏んでのことではないか。

このシナリオこそが最も実現可能性が高いと思う。そして、このシナリオの場合、選挙前と同じ空気感で2027年の介護報酬改定に向けた議論が進む。そして、何らかの形でケアマネの処遇改善は実現し、介護報酬も引き上げられるのではないか。

一方、今回の選挙で、国民民主党や参政党など、現役世代を強く意識した政党が大きく票を伸ばしたことは自公も無視できまい。そのため、介護報酬引上げやケアマネの処遇改善が実現する一方、高齢者の負担を増やす施策導入も積極的に検討されるはずだ。結果として、2027年度の介護保険法改正では、ケアマネジメントへの自己負担の導入(ケアプラン有料化)や2割負担の対象者拡大が実現すると思われる。

少し期待できるが、実現可能性はなし―自公+立憲民主

いわゆる大連立だ。社会保障に関しては、現状維持を前提とした常識的な施策を持つ政党同士が組む形となる。その上、いずれもケアマネも含めた処遇改善や介護報酬改定の引き上げの必要性を指摘している。ケアマネの法定研修については、廃止には至らなくても、国の有識者会議の方針などを踏まえ、何らかの見直しが行われるのではないか。

このケースが実現すれば、ケアマネにとっても介護業界にとっても、少し明るい未来が期待できる。

ただし、このケースが実現することは、ほぼあり得ない。立憲民主党にとって自民党との全面的な握手は、そのアイデンティティを脅かす「禁じ手」と言えるからだ。過去には、日本社会党が「自社さ連立」という形で「禁じ手」を犯した結果、党勢を衰えさせたという歴史もある。今回の選挙後、野田佳彦代表が大連立の可能性を強く否定していることを思い合わせても、大連立の実現は夢物語だ。

介護やケアマネにとって最悪のケース―自公+維新

日本維新の会は、介護現場で働くすべての方の待遇・職場環境改善を掲げる一方、一丁目一番地の施策として、社会保険料の削減を標ぼうしている。

この政党が政権でキャスティングボードを握れば、確実に社会保障費の削減圧が強まる。おそらく、これまで財務省が掲げてきた介護保険分野の改革案(ケアプラン有料化や2割負担の全面導入、要介護1や要介護2の人が利用するサービスの総合事業化など)を、すべてそのまま推し進めようとするだろう。

一方、日本維新の会が公約で掲げた待遇改善については、あまり期待できないそうにない。政治家が賃上げ実現を目指す場合「処遇改善をする」と言ったり、書いたりするのが普通だ。それなのに、あえて「待遇改善」などという言葉(しかも、その後に職場環境改善などという言葉までくっつくけて)使っているいるあたりに、底意を感じるのだ。

「給与は上げられませんでした。でも、ICT活用普及などで職場環境は改善し、事務員の増加などで負担軽減が実現しました。つまり、待遇改善という公約は実現しているのです」

こんな風に強弁する余地が残された公約であるということだ。日本維新の会が政権に加わるのは、介護業界やケアマネにとって最悪のケースといえるだろう。

更新研修廃止や処遇改善は期待できるが…-自公+国民民主

ケアマネの更新研修廃止や処遇改善加算の対象への追加を掲げる国民民主が、政権で一定の影響力を持つことになれば、更新研修の廃止やケアマネの賃上げも期待できる。

ただし、この国民民主党の一丁目一番地の施策は「手取りを増やす」こと。社会保険料や税負担を軽減には、最優先で取り組もうとするはずだ。

現役世代に頼った財源を削りながら、処遇改善も進める―。そうなれば、高齢者に負担を求める財源確保に踏み出さざるを得まい。つまり、国民民主がキャスティングボードを握ると、ケアマネの処遇面の改善や、研修の負担軽減は期待できる一方、ケアプラン有料化など、財務省が提案してきた介護保険制度の改革案の実現可能性も高まる。

実現がほぼ間違いなくなったプラン有料化

まとめると、今回の選挙により、2027年度の法改正でケアプラン有料化が実現される流れが出来上がったといえる。また、2割負担の対象者拡大も、ほぼ間違いなく実現するだろう。これだけ現役世代を重視する政党(国民民主党や参政党)が躍進した以上、政権のカタチがどうあれ、高齢者施策は厳しく見直さざるを得ない。

最後に、石破首相が心変わりをし、退陣した場合についても考えておきたい。

この場合、これまでに石破首相が公言してきた「介護報酬の引き上げ」や「処遇改善」といった施策はすべて白紙となる。また、今回の選挙結果を踏まえ、次の自民党総裁には、より現役世代に寄り添い、高齢者施策には厳しいまなざしを向ける人材が選ばれるだろう。

つまり、このタイミングでの石破首相の退陣は、より厳しい介護保険法改正や介護報酬改定(例えば、最悪、プラスマイナスゼロ改定など)をもたらす、引き金となる危険性もはらんでいるといえる。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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