CMO特別インタビューCMO特別インタビュー

CMO特別インタビュー

「ケアマネと向き合える専門職の『窓口』を病院にも」-メディカルケアプランナーを提言した、日本慢性期医療協会の橋本会長インタビュー(前編)

先月、日本慢性期医療協会(日慢協)は、病院の現場関係者が在宅のケアマネジャーのケアプラン作成を支援する「メディカルケアプランナー」の導入を提案しました。その提案の狙いや、現場にもたらす効果などについて、日慢協の橋本康子会長に話を聞きました。


日本慢性期医療協会 橋本康子会長

―改めて、「メディカルケアプランナー」がどのような仕組みなのか、ご教示ください。

病院を退院して介護保険サービスを使うことになった患者さんを、支えるための仕組みです。具体的な取り組みとしては、病院の医師や看護師、薬剤師、セラピストらがチームを組み、在宅で退院患者さんを担当するケアマネジャーさんに必要な情報を提供し、ケアプラン作りを支援することを想定しています。

―なぜ、この仕組みを提案されたのでしょうか。

日本慢性期医療協会では、退院した患者さんの在宅での生活を適切にささえうるケアプランを立案してもらうため、地域全体の医療・介護連携のコーディネート役となる「メディカルケアマネジャー(医療介護支援専門員)」の育成を手掛けてきました。

今回、提案したメディカルプランナーは、メディカルケアマネジャーを発展させ、さらに踏み込んだ取り組みと言えるでしょう。

―すると、メディカルケアプランナーは、メディカルケアマネジャーが担う、ということになりますか。

いえ、必ずしも、日本慢性期医療協会のメディカルケアマネジャーの講習を受けている必要はありません。医療的な支援が重要な退院患者に対し、適切なケアマネジメントができ、給付管理ができるケアマネジャーさんであれば、それでいいのです。

既存の「退院・退所加算」との違いは?

―病院側からの情報提供というと、既に退院・退所加算があります。

この仕組みは、基本的に、退院時の情報提供を想定した加算です。それに対し、メディカルケアプランナーは、退院時はもちろん、在宅に戻った後の病院側・居宅介護支援間の情報提供・相談・連携も含めています。

さらにいうと、病院でのカンファレンスにケアマネさんが出向き、連携を図る今の退院・退所加算の仕組みは、ケアマネさんにとって、ちょっと負担が大きすぎるようにも思えるのです。

―どういうことでしょうか。

現在の仕組みでは、ケアマネさんは、カンファレンスに参加したすべての専門職一人ひとりに、患者についての情報を確認してまわらなければなりません。実際、カンファレンスが終わった後、ケアマネさんが、各専門職に1時間や2時間もかけて「今後、支援する上で、どんな配慮が必要か」を聞きまわっている姿をよく見ます。

それでも、ちゃんと聞き取ることができれば、まだいいといえるかもしれません。病院内の誰に聞けばいいかもわらないまま、カンファレンスが終わってしまい、結局は「まあ、あとは家族か本人に確認するか」とあきらめてしまうケースも珍しくないのです。

そうした問題を一気に解決するためにも、メディカルケアプランナーという仕組みが必要と思ったのです。

在宅生活で「医療に関するニーズ」を優先すべき時

―メディカルケアプランナーという仕組みに参画する病院スタッフは、具体的にどのような取り組みをすることが考えられますか。

ごく分かりやすく、すぐにでもできる取り組み例として、メディカルケアプランナーである病院スタッフが、カンファレンスに参加する前、ケアマネさんに伝える情報をまとめておくことが挙げられます。「今後、在宅で支援する上で、どのような医療的な配慮が必要か」-それが、まとまっているだけでも、ケアマネさんの活動には大変、有益と考えます。

ケアマネさんがケアプランを立てる時、本人の意志。次に家族の想い、その次に医療に関するニーズなど、という優先順位で考える方が多いように思います。

でも、ケースによっては、本人の意志や家族の想いより、患者さんの目標を実現するために、医療に関するニーズを優先すべきことだってあります。

―医療に関するニーズを優先すべきケースとは、例えば、どのようなケースですか。

例えば、病院でリハビリに取り組んできた人ですね。具体的には「リハ病棟で、やっと歩けるようになった人」あるいは「失語症がようやく治りかけてきた人」などもそうです。そうした人に対しては、年単位での医療的な支援が求められるのです。

だが、リハビリは辛いものです。中には、その効果を十分に理解せず「退院したら、もう辛いリハビリはご免だ!」と強く思っている患者さんもいるでしょう。同じように退院後のリハビリの必要性を知らずに「退院後は、あんまりお金はかけられないな…」と考える家族もいるでしょう。

そんな患者や家族の思いや考えに沿ってケアプランが作られてしまうと、回復途上にあった体や言葉の機能が、停滞したり、失われたりする可能性が高くなってしまいます。こうしたケースは、案外、現場では多いと思うのです。

それを防ぐには、やはり、病院の医療専門職と、生活を支えるプロであるケアマネジャーが、正しく、効率的に情報をやり取りできる、メディカルケアプランナーのような制度が要るのです。在宅で暮らす人の生活の質を保つためにも、どうしても必要なことです。

地域連携室とメディカルケアプランナーの役割の違い

―なるほど。ちなみに、メディカルケアマネジャーという仕組みに参画する病院側のスタッフには、どのような専門職が入ることが想定されますか。

医師、看護師はどんな病院でも入ることになるでしょう。回復期の病院であれば、患者を担当していたリハビリ職も関わるのではないでしょうか。あとは、医療ソーシャルワーカー(MSW)。そして、病院内で介護を担当していた人や薬剤師さんも含まれます。そういった人達からの医療支援のための情報を、まとめてケアマネさんに提供し続けるわけです。

―病院と地域の連携の窓口というと、文字通り、地域連携室が存在します。

確かに地域連携推進室はありますが、この組織は、病院全体の患者の入退院退院に関する業務を担っています。そこにケアマネが個別の患者の細かなことを聞きに行っても、「それは担当する現場の医療関係者に聞いてください」となってしまいます。

だから、地域連携室がケアマネジャーに対する「窓口」になるのは、ちょっと非現実的。具体的にメディカルケアプランナーという仕組みの中で、病院側の「窓口」になるとしたら、例えば、各病棟の看護師の責任者とか、ですかね。

ケアマネジャーさんは利用者と一対一で向き合う専門職です。そうである以上、病院側が連携する「窓口」やメンバーも、同じように患者と一対一で向き合う専門職でなければ、お互い、十分な情報のやり取りができないでしょう。

橋本康子(はしもと・やすこ)
医学博士。藤田医科大学医学部卒業後、香川大学医学部第1内科に入局。米国インディアナ大学腫瘍学研究所勤務を経て、医療法人社団和風会橋本病院に勤務。2000年より理事長を務め、千里リハビリテーション病院、千里リハビリテーションクリニック東京を開設。日本慢性期医療協会会長、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会委員などを歴任。社会福祉法人徳樹会・福寿会理事長も務める。

スキルアップにつながる!おすすめ記事

このカテゴリの他の記事

CMO特別インタビューの記事一覧へ

こちらもおすすめ

ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報

介護関連商品・サービスのご案内

ログインしてください

無料会員登録はこちら

ログインできない方

広告掲載・マーケティング支援に
関するお問い合わせ

ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは

全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。

ケアマネジメント・オンラインの特長

「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。

ご質問やお問い合わせはこちら

お問い合わせページ