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小濱道博の介護経営よもやま話

骨太方針2025が示すケアマネの「近未来」

今月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)は、わが国の経済成長と社会保障の持続を両立させるための中長期ビジョンとなる政策文書であり、介護・福祉分野にも直接的な影響を及ぼす重要な指針である。

骨太方針2025が今後の制度運用や事業経営にどのような影響をもたらすのかを理解しておくことは、ケアマネジャーにとっても極めて重要である。

それでは、骨太方針2025の中身を見ていこう。まず注目すべきなのは、重点項目として「人材確保」と「処遇改善」が掲げられている点である。

政府は今回、「賃上げこそが成長戦略の要」と位置付け、最低賃金の引き上げを含む実質賃金の上昇を政策の中心に据えた。

特に介護・福祉分野は、人手不足が深刻な12業種の1つに数えられており、重点対象となっている。骨太方針2025では、昨年一本化された介護職員等処遇改善加算などの効果検証を続け、2025年末までに処遇改善の結論を出す方針が示された。

介護などの「公定価格の引き上げ」の記載があり、1年前倒しで2026年春に介護報酬改定が行われるのではないかという憶測と期待も出始めている。

しかし、介護報酬を改定する場合、社会保障審議会で審議する必要がある。同審議会は現在、2027年度の介護保険法改正に向けた審議のまっただ中であり、前倒しは難しそうだ。

今回盛り込まれた「公定価格の引き上げ」とは、おそらく処遇改善加算にポイントを絞ったものとみられる。昨年春に加算が一本化された際、2025年のベースアップ分の財源は加味されたが、2026年分については継続審議とされている。この経緯を踏まえると、おそらく間違いないであろう。

ただし、異常な物価高騰が続き、それが介護事業経営を圧迫していると判断された場合は、コロナ禍のような基本報酬引き上げの特例措置が行われる可能性はある。

最低賃金引き上げはケアマネにも影響

骨太方針2025では、最低賃金を2020年代に全国平均1500円に引き上げるという目標も掲げられ、今後5年間で官民一体となった集中的な支援が行われるであろう。

これに伴い、地域区分ごとの介護人材確保への影響についても議論され、次期報酬改定までに級地区分の見直しが進められる予定である。これは、隣接市町村との賃金格差による人材流出といった実務上の課題にも関係し、ケアマネジャーの業務にも直接的な影響を与える可能性がある。

さらに骨太方針2025では、生産性向上への集中投資として、「省力化投資促進プラン」も打ち出されている。

介護分野では、ICTやデジタル技術の導入が明確に示されており、ケア記録やアセスメント、計画書作成業務に対するAI・音声入力の活用や、業務プロセスの標準化・効率化が促進される方向にある。これにより、ケアマネジャー業務も従来の紙ベースからICT基盤へ移行するとみられ、業務の質と量の両面に変化が及ぶであろう。

ケアマネも異文化理解問われる時代に

骨太方針2025では、多様な担い手の確保も重要な柱の1つとして明記されている。

今年4月から、訪問介護分野にも外国人技能実習生や特定技能者の参入が認められたが、2027年から始まる予定の「育成就労制度」や、特定技能制度の見直しにより、介護現場における外国人材の活用がいよいよ本格化する。

外国人介護職員は、単なる労働力の補完にとどまらず、地域共生社会の担い手となる存在だ。このため、多文化共生や語学支援、人材のキャリアパス設計などが事業所単位で求められる。ケアマネジャーにとっても、異文化への理解やサービス調整力が問われる場面が増えるであろう。

これと同時に、リスキリング支援も強化され、介護・福祉分野で働く人に対しても、ICTやデジタル技術を活用するための学習機会の提供や補助制度の充実を図る。

特に「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」の育成は、介護従事者が高度な技能を有する専門職として適正に評価される新たな枠組みであり、ケアマネジメントの専門性向上への波及効果も期待される。

地域資源把握・活用スキルの一層の向上を

一方で、2040年を見据えた地域包括ケアシステムの深化も進められる。市町村単位での支援体制強化、多世代の参画による地域づくり、担い手不足地域での相談支援の一元化など、地域共生社会の実現を目指す改革が進展しており、ケアマネジャーは地域資源の把握・活用に関するスキルを一層高める必要がある。また、相談支援とケアマネジメントの垣根を越えた多職種連携や、分野横断的な人材育成の必要性も今後高まるであろう。

さらに、利用者負担の在り方についても、2025年末までに結論が示される予定である。介護保険制度の持続可能性を確保するという観点から、利用者の自己負担割合の見直しが既に議論されており、ケアプラン作成における経済的アセスメントの重要性も増す可能性がある。

ケアマネジメントの未来と専門性への期待

骨太方針2025は、単なる経済政策の枠にとどまらず、介護・福祉分野の制度設計・運用の今後を方向付ける国家戦略である。

ケアマネジャーにとっても、業務のデジタル化や地域連携の強化、多様な人材との協働、そして制度改革への柔軟な対応が求められている。自らの専門性を再定義し、変化を前向きに捉えることで、地域におけるケアの質と継続性を担保する役割が一層重要となるであろう。利用者と地域双方にとって最適なケアマネジメントを実現することが、ケアマネジャーの使命となる。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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