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1年無料開放のプランデータ連携、これで普及は進むのか?!-居宅での真のICT化を進めるための提言-

厚生労働省は、「ケアプランデータ連携システム」の普及を推し進めるため、6月1日から1年間、このシステムを無料で利用できるようにするようだ。2026年4月から本格運用が開始される介護情報基盤で、ケアプラン情報を活用するためには、どうしても同システムの普及が不可欠であることからの緊急施策ということなのだろう。しかし、果たして「ケアプランデータ連携システム」は普及するのだろうか?そもそも、厚労省が進めようとしている居宅介護支援におけるICT化とは、この手の取り組みの積み重ねで、本当に実現されるだろうか。改めて考えてみたい。

ファックスは、介護業界くらいしか使わない「前世紀の遺物」

多くの読者の皆様もご存じの通り、介護業界では、多くの事業所が毎月の介護事業所間の実績管理・確認を、ファックスなどの紙資料でやりとりしている。

だが、このファックスというツールは、世間的には「前世紀の遺物」といっていいほど古い。実際、私が大学の授業で4年生に「今まで、ファックスを使ったことがあるか?」と聞いたら、約100人の学生のうち2人しか使ったことがなかった。

そんなファックスが介護業界では主力ツールのままなのだ。

この時が止まったような状況を思えば、厚労省がケアプランデータ連携システムを普及させ、実績管理・確認をICT化させようと躍起になっている姿勢も理解できる。私自身、一日も早く、介護業界が「紙離れ」してくれることを心から願ってもいる。

だが、残念ながら、6月から始まるケアプランデータ連携システムの無料キャンペーンについては、あまり前向きには評価できない。1年間、無料にしたところで、「紙離れ」が進むとは、とても思えないからだ。

厚労省が、無料キャンペーンを企画したのは、「年間2万1000円の負担が、居宅介護支援事業所の重荷になっているのは?」という予測があってのことだろう。確かに、事業規模が小さい居宅介護支援事業所にとって、その経済的負担も、あまりバカにはできない。

だが、ケアプランデータ連携システムの普及を阻む最大の要因は、経済的な負担ではあるまい。最大の理由は、おそらくは現場の介護従事者の意識にある。平たくいえば「今さら、新しいシステムを入れるなど、必要でもないし、めんどうくさい」と思われてしまっている、ということだ。

めんどうと思われる理由その1-別のシステム・ソフトを活用していて不必要!

居宅介護支援事業所などの中には、記録や請求などのため、既にさまざまなソフトやシステムを活用している事業所も多い。こうした事業所にしてみれば、さらにケアプランデータ連携システムを導入・活用しろと言われたところで、その有用性も必要性も見いだしにくいだろう。

めんどうと思われる理由その2-年齢…

一方、実績管理などをファックスに頼り切っている事業所にとっては、ケアプランデータ連携システムの導入は、それなりの意義を見いだせる、新たなチャレンジとなる。…はずである。

だが、残念なことに、このストーリーを理論のみにとどめてしまう要因が、介護の現場にわだかまっている。

その要因とは、働く人たちの年齢の高さだ。

例えば、ケマネマネの平均年齢は53.6歳。60歳以上も3割を占める(図を参照)。逆に35歳未満は5%に満たない。訪問介護、デイサービスなどといった小規模事業所で実績管理・確認している従事者は、現場の介護職員を兼任している者もおり、年齢も高齢化している。

※厚生労働省の資料より

この介護事業者の現状を鑑みれば、現場の人々が新しいシステム(ソフト)を取り入れることを「めんどくさい」と思っても、やむを得ないともいえる。

そして、上記で示した二つの「めんどくささ」を解消しないまま、利用料金だけをタダにしたところで、ケアプランデータ連携システムの普及は、そんなに進まないだろう。

厚労省資料によれば、全国の「ケアプランデータ連携システム利用申請状況(2024年11月22日時点)」は6.3%だというが、このまま、今回の無料キャーペンを実施したとしても、その割合は、せいぜい10%くらいまでしか伸びないのではないか。

「PDF×メール」の普及の徹底で、現場の意識を変えていくべき!

ならば、どうしたら居宅介護支援などの現場で「紙離れ」を推し進めていけばいいのだろうか。

私は、まず「PDF×メール」の活用を、さらに徹底して進めるべきと考えている。「PDF×メール」すらもできていない現場に、一足飛びにケアプランデータ連携システムを押し付けるのは、性急に過ぎると思うのだ。

既に述べた通り、いくらシステムやソフトを整備したところで、実際、利用できる人達の意識を変革していかなければ、ケアプランデータ連携システムの普及は進まない。そのためにも、まずは、「PDF×メール」の活用促進により、60歳前後の介護従事者の意識から変えていくべきと思うのだ。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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