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更新研修は「継続前提」、厚労省の方針に待った/染川朗(日本介護クラフトユニオン会長)

更新研修を巡り、ケアマネジャーの間でさまざまな意見が飛び交う中、厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」は昨年12月にまとめた中間整理で、今後、受講の大幅な負担軽減を図るとともに、制度の在り方を検討することが「適当」とした。しかし、素案の段階で同省は、継続を前提とする方針を示し、「廃止」は対象外とする構えだった。これに待ったをかけたのが労働組合「日本介護クラフトユニオン」(NCCU)の染川朗会長だった。検討会での発言の裏にはどのような思いがあったのか―。染川会長に聞いた。


日本介護クラフトユニオン 染川朗会長

―検討会の中間整理をどのように評価していますか。

「他産業・同業他職種に見劣りしない処遇を確保する」と明記された点が、最も重要だと思っています。

実は素案の段階では、「他産業に見劣りしない処遇を確保する」と記載されていました。これでは、介護業界全体の話になってしまいます。

そこで私は、ケアマネジャーの担い手不足は、介護業界内での他職種との処遇格差に大きな原因があることを指摘しました。

NCCUが行った2023年の賃金実態調査と2024年度の就業意識実態調査によると、全ての職種の中で平均年齢が最も高いのはケアマネジャーです。

月給制組合員の介護業界での経験年数を見ても、ケアマネジャーは平均18.7年で最も長く、次いで通所系管理者の16.2年、訪問系管理者の15.7年の順でした。ところが、この3つの職種の平均年収を比べると、ケアマネジャーは394.8万円で最も低い結果となりました。これは、訪問系管理者より70万円、通所系管理者より35.4万円低い数字です。

ケアマネジャーは熟練者が増えているにもかかわらず、処遇面で全く優遇されていないのです。このため介護現場では、「ケアマネジャーになりたくない」といった声も聞こえてきます。

もちろん、他産業に見劣りしない処遇の実現は必要ですが、ケアマネジャーの処遇については、介護業界で働く他職種との比較の中で、正当に評価し直すことも急務だと思います。

中間整理で、「同業他職種」の文言が加わったことは、こちらの主張に一定の理解を示してくれたと感じています。

ただ、2024年度の補正予算に盛り込まれた介護従事者への一時金についても、居宅介護支援は対象外となりました。政府は掛け声だけで、やらなければならないことを後回しにしています。

ケアマネジャーへの処遇改善は、検討会の委員の中での共通認識だったと思います。中間整理の提言を放っておくことがないよう、今後も強く主張していくつもりです。

―更新研修の継続を前提とした厚労省の方針に対して、委員でただ一人、異を唱えました。

ネット上では「孤軍奮闘」という表現をされた方もいるようですが、それは違います。NCCUの調査に回答してくれた600人以上のケアマネさんの声を代弁しただけで、決して私見を話したわけではありません。

現場の声を伝えていたにもかかわらず、中間整理の素案の段階で、更新研修の「継続」が明記されていたため、賛成しかねると申し上げました。

NCCUが昨年4~5月に行った実態調査で、ケアマネジャーに更新研修について尋ねたところ、「費用が高い」「時間が長い」「事例など作成する時間が取れない」など、費用と時間に関する不満が上位を占めました。

労働基準法上のルールとして、業務に必要な研修に参加する場合、会社は職員に賃金を支払う必要があります。ところが、一部の法人は研修を「業務」と位置づけていません。これは非常に問題です。

国の基金を活用して、研修の費用を補助する自治体もありますが、実施状況やその金額にはばらつきがあります。やはり国が直接面倒を見るべきで、会社が全額負担できるような、余力のある介護報酬の設定が必要だと思います。

そもそもケアマネジャーは、法定研修のために業務を休むわけにはいきません。そうなると、通常の業務に上乗せして負担が生じることになります。NCCUの調査では、病気になっても、身内に不幸があっても、研修を休めないといった声がたくさん上がりました。こんなおかしな制度は変えていかなければなりません。

デメリットは、費用と時間以外にもあります。昨年春に見直された研修カリキュラムでは、高齢者の権利擁護に関するメニューが充実しましたが、せっかくいいものを作っても、法定研修は5年に1度です。本当に必要な内容であれば、タイムリーに提供すべきだと思います。

こうした観点から、私どもは現在の更新研修を廃止し、国が主体となって、研修項目や体系を再設計すべきだと考えています。

その際は、必要な研修をタイムリーに開催すること、研修の時間は可能な限り短くすること、研修の費用はケアマネジャー個人に負担させないこと―これらを念頭に、オンデマンド形式の研修を基本とするなどの対応を進めるべきだと思います。

取材・構成/敦賀陽平

染川朗(そめかわ・あきら)
鹿児島県出身。2003年、日本介護クラフトユニオン入局。本部組織部長、東京総支部長、事務局長などを経て、2020年から現職。厚労省の社会保障審議会介護保険部会の臨時委員、東京労働局雇用保険審査参与、介護労働安定センター理事など要職多数。60歳。

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