一人ケアマネの歩き方~独立を目指すケアマネのための実践ガイド~

独立型一人ケアマネのリアルな収支

「いつかはケアマネジャーとして独立したい」―。こんな思いを抱いているケアマネジャーの皆さんも多いのではないでしょうか。本連載ではそのような皆さんに向けて、居宅介護支援事業所の独立開業に向けた具体的なステップや経営のリアル、さらには独立後の生存戦略まで、“生粋の一人ケアマネ”である筆者の経験を交えながらお伝えしていきます。

「独立したいけれど、本当に生活できるのだろうか?」
「毎月の固定費はどれくらいかかるのか?」

独立を考える時、まず浮かぶのはこうした不安ではないでしょうか。独立は理想の働き方を実現できる魅力がありますが、その際は、経営者としての視点を持ち、しっかりとした収支のイメージを持つことが不可欠です。

そこで今回は、「独立型一人ケアマネのリアルな収支」について詳しくお伝えします。収入の内訳から実際にかかる固定費までを具体的に解説しますので、「独立後の生活が成り立つのか?」を考える材料にしていただければと思います。

独立型居宅介護支援事業所の収入

はじめに、独立ケアマネの収入について見ていきましょう。

居宅介護支援事業所に勤めるケアマネさんであれば、おおよその収入のイメージができるのではないでしょうか。なぜなら、居宅介護支援事業所の収入源は基本的には「要介護」「要支援」「認定調査」の3つしかなく、これは法人に所属していても、独立していても変わらないからです。

では、独立ケアマネの場合、これらの収入はどのようなバランスで成り立っているのでしょうか。私が「ヒトケア」としての副業を始める前の令和3年度(2021年度)の売上データをもとに、具体的にお伝えしていきます。

要介護

収入の大部分を占めるのが、「要介護」の介護報酬です。令和3年度は629万5,284円で、収入全体の約9割を占めています。年間464件(月平均38.7件)のプランを担当しているので、1件当たりの報酬単価は約1万3,570円となります(地域区分や担当する要介護度によって異なります)。

要介護のケースを多く持つことで安定した収入が見込めますが、一人で対応できる件数には限界があります。

令和6年度(2024年度)の介護報酬改定により、担当件数の上限が緩和され、44件(居宅介護支援費IIは49件)まで引き上げられましたが、私の経験では、要介護の担当件数が40件を超えると、緊急対応が求められる状況が頻発し、精神的な負担も大きくなりました。従って、40件未満が無理なく業務を続けられる目安ではないかと考えています。

業務を安定して継続するためには、ICTツールやAIを活用するだけでなく、適切な担当件数を維持することが重要です。

要支援

要支援のケアプラン作成による収入は41万7,742円で、全体の約6割を占めています。年間85件(月平均7.1件)なので、1件当たりの報酬単価は約4,915円です。

要介護のケアプランに比べると、要支援の報酬は低く設定されているため、収益の中心にはなりにくいのが実情です。

しかし、地域包括支援センターとの連携を強化することで、安定的に案件を獲得しやすいというメリットもあります。また、要支援から要介護へと移行するケースも多いため、長期的な視点で利用者を支援しながら、事業の安定化を図りましょう。

認定調査

認定調査の収入は31万6800円で、全体の約5%を占めています。担当件数は年間72件(月平均6.0件)なので、1件当たりの報酬単価は4,400円です。

認定調査は、要介護や要支援のケアプラン作成とは異なり、継続的な関わりがないのが特徴です。調査は1回限りで終了し、その後の支援やフォローは必要ないため、業務負担のコントロールがしやすい点がメリットといえます。

また、介護報酬(居宅介護支援費)であれば、利用者がサービスを利用しない月は無報酬ですが、認定調査は1回ごとに確実に報酬を得られるため、安定的な収入につながりやすい側面もあります。

その他

「その他」の収入としては、研修講師料の1万円がありました。

独立後は、研修の講師や執筆、コンサルティング業務などを取り入れることで、収入の幅を広げることも可能です。ケアマネとしての専門性を生かしながら、自身のスキルを収益に結び付けることも、独立ケアマネの生存戦略の一つです。

独立型居宅介護支援事業所の支出

独立型ケアマネとして事業を運営する際、収入と同様に重要なのが支出、特に固定費の管理です。固定費は毎月必ず発生する支出であり、これを適切にコントロールすることで、経営の安定性を高めることができます。

ここからは、独立型居宅介護支援事業所における主な固定費と、その削減方法について解説します。

人件費

経営者自身の給与である「役員報酬」が人件費の中心となります。

役員報酬は、事業年度の開始から3カ月以内に設定・変更が可能であり、例えば3月決算の場合、4月から6月の間に見直すことができます。

役員報酬を適切に設定することで、個人の所得税や住民税、社会保険料の負担を最適化することが可能です。また、家族を従業員として雇用し、所得を分散することで、税金や社会保険料の負担を軽減する方法もあります。

社会保険料

法人を設立すると、社会保険への加入が義務付けられ、事業主と従業員がそれぞれ保険料を負担します。健康保険料と厚生年金保険料は労使折半で、事業主と従業員がそれぞれ50%負担します。

社会保険料は「標準報酬月額」に基づいて算出され、4月から6月の平均給与が基準となります。この期間の給与を適切に設定することで、年間の保険料を抑えることが可能です。

家賃

事務所の賃料は、固定費の中で大きな割合を占める支出の一つです。

一人ケアマネの場合、6~7畳程度のスペースがあれば十分ですが、賃貸物件を借りると毎月の賃料が発生します。私の場合、月5万円の賃料が発生しているので、年間では60万円の支出となります。

この負担を軽減する方法の一つとして、自宅を事務所として活用することが考えられますが、事務所部分と生活のスペースを明確に分ける必要があるため、注意が必要です。自宅での開業を検討する際は、事前に保険者へ相談しておきましょう。

通信費

ケアマネの業務上、インターネットや電話・FAXの利用は欠かせません。

これらの通信費を削減する方法として、まずインターネット環境が完備されている賃貸物件を契約するという選択肢があります。物件によっては、インターネット利用料が家賃に含まれている場合もあり、月々の通信費を抑えることができます。

また、固定電話を設置せず、IP電話アプリを利用すれば、基本料金や通話料も削減できます。スマートフォンや携帯電話で、事業用の電話番号(代表電話)の発着信ができるので、通信コストを抑えつつ、仕事とプライベートの通話を分けることが可能です。

さらに、インターネットFAXを利用すれば、FAX機を設置する必要がなくなり、紙代やインク代などの消耗品費を削減できる上、FAXの送受信をオンラインで完結させることで、業務の効率化にもつながります。

次回は「独立開業の準備と手続き」

今回は、「独立型一人ケアマネのリアルな収支」について解説しました。

独立すると、つい多くの件数を抱え込みがちですが、目の前の収入を増やすことだけにとらわれず、精神的な余裕を持ちつつ、持続可能な働き方を意識することが大切です。

次回のテーマは「独立開業の準備と手続き」です。独立を決意した後、何から始めれば良いのか、必要な手続きや準備すべきことについて詳しく解説していきます。ぜひご期待ください!

ヒトケア
2012年にケアマネジャーとしてのキャリアをスタート。2015年には居宅介護支援事業所を開業し、現在も「一人ケアマネ」として活動している。ケアマネ歴12年以上の経験を基に、業務効率化や居宅介護支援事業所の立ち上げノウハウを発信するブログ「ヒトケア(一人ケアマネ)の仕事術」を運営。NPO法人タダカヨが運営する介護従事者向けオンラインPCスクール「タダスク」の講師も務めている。

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