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結城教授の深掘り!介護保険

40年に向け「ケアマネの公務員化(大都市以外で)」を提唱する!

この1月、厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会が始動した。もはや全国一律の介護保険制度だけでは対応しきれないくらいに地域の介護ニーズが多様化したことを踏まえ、「既に介護ニーズが減少局面に入っている中山間地域」(中山間地域)「介護ニーズが2040年以降も拡大する都市部」(大都市部)「介護ニーズが当面拡大し、その後減少に転じる一般地域」(一般自治体)などを想定し、介護サービス提供体制について議論が進められるようだ。そこで今回は、2040年を見据え、新たなケアマネジメント提供体制を考えたい。

15年後、1万人未満の市町村が約4割に!

2040年に向けたケアマネジメント提供体制を考えるにあたっては、市町村の人口規模がどのように変化するかを今一度、確認する必要がある。

厚労省資料によれば2040年、つまり今から15年後には、人口1万人未満の市町村が4割に達するとしている。(表参照)。

表 市区町村の人口規模別分布見通し
2015年(1,682自治体) 2040年(1,682自治体と仮定)
5千人未満 14.8% 24.1%
5千~1万人未満 13.7% 13.4%
1万~3万人未満 25.5% 24.6%
3万~10万人未満 29.5% 23.9%
10万~20万人未満 9.0% 6.9%
20万~50万人未満 5.4% 5.1%
50万~100万人未満 1.4% 1.3%
100万人以上 0.7% 0.6%

厚労省HPより

人口1万人未満の市町村の大半は中山間地域などの過疎地にある。こうした自治体では、高齢者も含め、すべての人口が減り続けることになるが、特に深刻なのは生産年齢人口が他の世代にも増して急減していく点だろう。その結果、ケアマネなどの介護関係従事者も激減し、枯渇してしまう危険性が生じる。

すぐにでも居宅介護支援事業所の役割まで吸収した包括を-中山間地域

そこで、人口1万人未満の自治体では、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所を併合して運営すべきと考える。言い換えるなら、居宅介護支援事業所を吸収した地域包括支援センターが、要支援1から要介護5まで、すべてのケアプランを担うことにすべきということだ。

その一方、こうした自治体では、民間企業などが居宅介護支援事業所を運営することは、一定の経過措置を経た上で、禁止すべきではないか。当然、多くの反発が予想されるが、急激な人口減少にさらされる中山間地域でケアマネジメント業務を維持するためには、どうしても避けられない規制強化と考える。ただ、社会福祉協議会といった準公的機関が運営できる余地は残してもいいかもしれない。

簡単にまとめるなら、中山間地域では、基本的に公務員(あくまでも契約社員でなく正規社員)にケアマネジメント業務を任せるようにしていく、ということだ。

現行制度を維持、ケアマネの大幅な待遇改善も不可欠-大都市部

一方、東京、大阪、名古屋などといった大都市では、団塊世代が85歳以上になることなどの影響で、今後15年間でも要介護者が急増していく。

大都市部では、引き続き現行の仕組みを維持し、ケアマネ確保に努めていくべきである。当然ながらケアマネの待遇(賃金)が良くなるような介護報酬の大幅引き上げは必要不可欠だ。具体的には年収500万円が実現できる報酬単価を想定していかなければならない。

同時に、できる限り独立型の居宅介護支援事業者が増えるよう、政策誘導する必要もある。そのためには、例えば独立型居宅介護支援事業所に大幅な「加算」をつけることも検討すべきであろう。

高齢者人口の減少のタイミングで、包括と居宅の合併を―一般自治体

そして中山間地域でもなく、大都市でもない一般地域では、当面は、東京などの大都市部のように現行通りの仕組みを維持すべきだ。そして、高齢者人口が減少しはじめたタイミングで、先に中山間地で提案したような体制-市町村が地域包括支援センターと居宅介護支援事業所を併合させた上で、ケアマネジメント業務を公務員が担う体制-を整えるべきではないか。

「ケアマネの公務員化」によるメリット

私の提言を端的にまとめるなら、「大都市部ではケアマネの処遇改善に努めつつ、現行制度の維持を。それ以外の自治体では、高齢者人口が減り始めるタイミングで、ケアマネジメント業務を公的業務とする。そして、居宅のケアマネも地域包括支援センターの職員も公務員とする」ということになる。

「ケアマネの公務員化」ともいえるこの提言については、「荒唐無稽!」と思う人もいるだろう。だが、そのメリットまで認識すれば提言の見え方・感じ方も変わると思う。

「ケアマネの公務員化」がもたらすメリットは、次の通りだ。

  • 年収などのケアマネの待遇面が安定する
  • 処遇困難ケースといった問題のある利用者及び家族に対し、行政の立場から向き合えるため、いままで選択できなかった対応も検討できる
  • より中立・公正なケアマネジメントを実現できる
  • 要支援1から要介護5まで、一気通貫のケアマネジメントが実現できる

今こそ求められる「大胆な発想の転換」

今、日本社会が直面している少子高齢化と、それに伴う各種の問題は、介護保険制度が創設された25年前には、想像もできなかったほどに深刻だ。例えば、介護保険制度が始まった当初、ケアマネが確保できなくてサービスを受けられない人が出るなど、どこの誰が想像できただろうか?

この深刻な事態を打開するには、既存システムに固執しない、大胆な発想の転換が不可欠である。「どうせ難しい」「突拍子もないことだ」などと、できない理由ばかり考えるアタマでは、全く問題解決には至らない。ぜひ政策当局には、これまでの仕組みにとらわれない発想を期待したい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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