小濱道博の介護経営よもやま話小濱道博の介護経営よもやま話

小濱道博の介護経営よもやま話

年明けから運用開始、経営情報報告の要点を再確認

厚生労働省は13日付で介護保険最新情報Vol.1336を出し、介護事業者が経営情報を報告する際に使用する「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」について、年明けの1月6日午後1時から運用を開始すると発表した。

今回は、経営情報の報告が義務化された背景を改めて振り返るとともに、新制度のポイントをおさらいしておきたい。

経営上の課題にきめ細かく対応

居宅介護支援事業所は、要介護者やその家族が必要な介護サービスを受けられるよう支援するという、介護保険制度の中核的な役割を担っている。ケアマネジャーが作成するケアプランは、利用者の生活の質を決める重要な要素の1つであり、それだけに事業所の経営基盤の安定性は、サービスの質や継続性に大きな影響を与える。

近年、介護事業者の経営環境は、新型コロナウイルス感染症の影響や少子高齢化による人材不足など、複雑な課題に直面している。

現場の経営状況を迅速かつ正確に把握し、適切な支援策につなげるため、国はこの春、全ての介護事業者に経営情報の報告を義務付けた。

従来の「介護事業経営実態調査」では、居宅介護支援事業所のように小規模な事業所が抱える地域課題が十分に反映されないという問題が指摘されていた。新制度では毎年度、全ての事業所から経営情報を収集するため、経営上の課題にきめ細かく対応することが期待されている。

居宅介護支援の報告内容は主に4つ

報告義務を果たすためには、前述の「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」への登録が必須となる。

このシステムは、経営情報の報告と管理をオンラインで一元化するために開発されたものだ。利用する際は、事前に「GビズID プライム」のアカウントを取得する必要がある。

法人として利用する場合、代表者が自身のマイナンバーカードを用いてオンラインで申請手続きを行うことが基本だが、印鑑証明書の添付による書類申請も可能だ。オンライン申請の場合は即日、書類申請でも2週間以内にはアカウントが発行される。

アカウント登録が完了すると、システム上で報告事項の入力が可能となる。データ入力時にガイドを参照できるなど、このシステムは、事業所がスムーズに情報を入力できるよう配慮されている。

居宅介護支援事業所が報告すべき内容は、主に4つある。

まず、事業所の収益と費用に関する情報である。これらは、事業所の経営基盤を分析し、経営が健全に行われているかどうかを判断する際の基礎となるものだ。なお、「収益」には介護報酬と利用者の負担金、「費用」には職員の給与や事務所の維持費などが含まれる。

次に、人事配置に関する情報である。人材の適切な配置は、ケアプラン作成の質に直結するため、報告内容として重視される。

ケアマネジャーを中心に職種ごとの配置状況を報告するが、その際、常勤換算による常勤職員と非常勤職員の内訳も入力する必要がある。複数の職種を兼務している場合、「主たる職種」の人数を入力する。ケアマネジャーの場合、「従たる職種」の人数としてもカウントする点に注意が必要だ。なお、派遣社員の人数は「他の職種」には含めない。

職員の給与については、任意の報告事項となっている。地域や事業規模ごとの給与を把握し、職員の労働条件の改善などのために活用されるという。

報告に備え、経営データは正しく記録を

報告のスケジュールは、年度ごとに定められている。

令和6年度分については、前述の通り、年明けの1月6日からシステム上での入力が可能となり、3月末が提出期限となっている。

令和7年度以降は、毎年度決算期終了後3カ月以内の報告が求められるが、令和6年度分については、令和6年3月決算の法人から同年12月決算の法人までが対象で、1月及び2月決算の法人については、令和7年度からとなる。

期限内に必要な情報をシステム上で入力し、送信することで報告は完了する。報告内容に不備がある場合は、システム上で修正や追加提出が可能となっている。各事業所は、日々の経営データを正しく記録し、スムーズに報告できるよう、日頃から準備を進めることが重要である。

情報公表制度見直しとは事情が異なる

収集された情報は匿名化され、都道府県や国が地域の課題を分析し、適切な支援策を実現するための基礎資料となる。具体的には、収益性が低い事業所への経営支援や、人手不足が深刻な地域の就労支援策などを検討する際に利用される。

また、地域における事業所の運営状況の立ち位置が比較できる仕組みになっているため、経営改善の指針としても活用できる。

報告義務は、居宅介護支援事業所にとって新たな負担と感じられるかもしれないが、制度の目的を考えれば、事業所の経営基盤を強化し、地域の介護サービスの質向上に取り組む上でも重要な仕組みである。事業所が正しく報告を行うことで、より効果的な介護サービスの提供につながるであろう。

なお、今年度は介護サービス情報公表制度も見直された。これにより、各事業所は財務状況がわかる書類(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を国に提出することが義務となった。

経営情報の報告義務と介護サービス情報公表制度の見直しとでは、事情が異なる。

経営情報の報告では、法人を特定できない形でデータが公開されるのに対し、介護サービス情報公表制度では、法人ごとの財務データが一般公開される。法人の決算書が国民の目に触れることで、経営状況が“見える化”される。これにより、金融機関や取引先だけでなく、職員との関係性にも大きな影響が及ぶだろう。大きな赤字を抱える法人は黒字化の対策が急務となる。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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