

結城教授の深掘り!介護保険
国の検討会でも浮上、「潜在」「元」ケアマネ活用案~抜本的対策にはならないが補完勢力なら~
- 2024/07/22 09:00 配信
- 結城教授の深掘り!介護保険
- 結城康博
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厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(ケアマネジメント検討会)で、ケアマネジャー不足への解決策として、介護支援専門員の資格を持っていても、ケアマネとして従事していない「潜在ケアマネ」や更新せずに資格を失効してしまった「元ケアマネ」の活用を進める施策を検討しているようだ。今回は、このテーマについて深堀りしたい。
研修前提の「潜在」「元」の活用案は無意味!
ケアマネジメント検討会で議論されている「潜在ケアマネ」や「元ケアマネ」の活用案は、更新研修や再研修を受けることが前提となっているようだ。案には、再研修の仕組みを改善したり、要件を緩和したりするなど、現場の負担を軽減するための工夫も含まれてはいる。だが、更新研修や再研修の簡素化だけでは「潜在ケアマネ」らの現場への復帰は望み薄だ。多少、復帰する人が増えるかもしれないが、ケアマネ不足の解消につながる決定打とはなりえまい。
かねてから私は主張しているが、現在のケアマネ不足問題は深刻な状況であり、インパクトのある対策を、次々に打たないと在宅介護は崩壊しかねない。
その流れでいえば、「潜在ケアマネ」や「元ケアマネ」の活用を進めるためには、「更新研修及び再研修制度」の廃止は絶対条件だ。とはいえ、その廃止だけで「潜在ケアマネ」や「元ケアマネ」の復帰が一気に進むわけではないと思う。
「ケアマネより給与が低くても一般事務を選ぶ」という現実
「潜在ケアマネ」や「元ケアマネ」が、資格を持っていながらケアマネ業務に従事していない理由の中で、最も重視しなければならないのが「賃金・待遇」の視点である。
2023年度の老人保健事業で「介護支援専門員として従事するための条件」という問いに対する答えでは、「処遇の改善」「事業所からの研修等の支援」「業務負担の軽減」「勤務日数・休日や勤務時間等の労働条件」などが上位となっていた(日本総合研究所「介護支援専門員の養成に関する調査研究事業報告書」2023年3月)。
そして「賃金・待遇」の問題は、他産業の人材不足まで視野を広げて考えなければならない。特に事務作業を得意とするケアマネの場合、他産業の一般事務職としても、いくらでも働き先が見つかる。
実際、本稿の執筆にあたって、久しぶりに元ゼミ生に電話で話を聞いたところ、次のような実体験を話してくれた。(※個人情報保護の関係で、多少、内容を脚色している)
「大学卒業後、7年間の介護職を経て30歳でケアマネ資格を取得。その後、ケアマネとして働いたが、今は、一般事務職として働いている。年収は300万円弱、自宅から通勤している。年収はケアマネ時代よりは少ないが、それほど気にならない」
「ケアマネとしては3年間働いたが、土日に仕事用の携帯電話を持たされるなど、精神的な負担が大きかった。今は契約社員の一般事務職だが、精神的負担はほとんどない」
「年収500万円ならケアマネ復帰も考えなくもないが、400万円未満であれば、再復帰は考えない」
端的に言ってしまえば、一般事務職より100万円ほど給与が高くても、ケアマネとして働く気にはならないということだ。そのくらい、ケアマネという仕事の責任と負担は重かったということだ。
この卒業生の声からもわかるが、「潜在ケアマネ」「元ケアマネ」とは、「現状程度の賃金・待遇では、ケアマネ業務に就きたくないから従事していない人々」と考えるべきだろう。そうした人が大挙して居宅の現場に復帰する流れを生むには、破天荒なほどに思い切った処遇改善=例えば、年収450万円から500万円円程度が保障されるなど=を実現する必要がある。
言い換えるなら、現実的な施策によって「潜在ケアマネ」や「元ケアマネ」の復帰を目指すのは、かなり無理があるということだ。
とにもかくにも「更新研修・再研修」の廃止こそが大前提!
もっとも、非常勤(アルバイト)ケアマネの発掘という視点で考えれば、「潜在ケママネ」や「元ケアマネ」の活用は、いくばくかは期待できるかもしれない。非常勤である以上、あくまで補完勢力としての役割に留まるだろうが、それでもないよりは、はるかにましだ。
ただし、補完勢力としての活用を実現するためにも、更新研修及び再研修の廃止は大前提である。特に「子どもが高校生もしくは大学生になったので、ケアマネに復帰を検討できる」45歳から50歳代の女性にとって、研修の廃止は、とても有効な誘い水となるはずだ。
残念ながら、ケアマネジメント検討会では更新研修や再研修制度の廃止は、議題にも上っていないようだ。だが、私は、社会情勢から考えても、これらの廃止論を唱え続けていきたい。

- 結城康博
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。
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