どうするICTへの対応…居宅のための導入講座どうするICTへの対応…居宅のための導入講座

有識者コラム「便利そう、でも不安」を超えて――ICTが変える介護の未来 【後編】

テクノロジーは、私たちの生活を便利にしてくれますが、「かえって大変そう」という現場の声も少なからず聞かれます。そこで今回は、前回に引き続き、茨城県小美玉市議会議員であり現役ケアマネジャー(以下、ケアマネ)でもある山崎晴生氏に、介護のICT化についてお話を伺いました。後編では、具体的な制度の動きや現場での実践例などを、さらに詳しく語っていただきます。

前編はこちら
「「現場の声で介護を変えよう」――介護福祉職による全国ネットワーク」

実際に触れて分かった、「ICTは怖くない」

2024年度のテーマに「多様なニーズに対応!地域連携とICTで専門性を高めよう!」を掲げた小美玉市ケアマネジャー研究会。この年に開催した勉強会では、参加者を数人ずつのグループに分け、ChatGPTを使って研修資料やケアプランを作成してもらいました。すると、これまで苦労して作っていた文章がAIによってサクサクと仕上げられていく様子に、会場のあちこちから歓声が上がったのです。「これこそ自分が欲しかったもの!」という声も聞かれたほどで、実際にテクノロジーに触れて便利さを体感することで、苦手意識は自然と薄れていくのだと感じました。参加者の喜ぶ姿を見て、私自身も本当にうれしかったですし、ICTの可能性をあらためて実感する機会にもなりました。

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便利なのに広がらない、ICT導入の壁とは?

厚生労働省は2025年6月、ケアプランデータ連携システムと介護情報基盤の一体化を打ち出し、システム利用料を1年間無料としました。しかし普及率はわずか7%程度にとどまっています。導入した人からは「便利」という声がある一方で、既存ソフトに機能を追加して使いこなすのは難しく、自分の事業所だけ導入しても相手が未対応なら機能せず、「結局はFAXの方が早い」という現実があります。つまり現状では、制度として十分に成り立っていません。

一方で、制度内容を工夫すれば成り立つ事例もあります。例えば、ある自治体が高齢者の外出支援としてタクシー券を配布しましたが、自立して動ける高齢者には有効でも、車椅子や寝たきりの高齢者は普通のタクシーに乗れず制度の恩恵を受けられません。本当に必要なのは、車椅子対応の車両を確保して運行し、すべての高齢者が平等に利用できる仕組みです。このように工夫を重ねれば、制度は現場の実態に即し、公平な支援を実現するものとして成り立ちます。

データ連携システムも同じであり、現場に即した使いやすさの確保、既存ソフトとの円滑な連携、そして地域全体での同時的な導入がなされて初めて広がります。つまり「導入すれば便利」ではなく、「誰もが公平に使える環境を整えること」こそが普及への鍵だと私は思います。

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テクノロジーを味方に、介護をさらに温かく

繰り返しになりますが、ほとんどのケアマネは「ICT化で便利になる」と頭では理解していると思うのです。だからこそ「便利ですよ」と言うだけでは変わらない。実際に使用してみて、「これは助かる!」と実感してもらうことが大事だと思います。いきなりシステムを導入するのではなく、まずは相談相手のような使い方でもいいでしょう。そうして少しずつハードルを下げ、日常業務に組み込んでいければと思います。私自身も「こんなにテクノロジーに頼ると自分の力量が落ちるのでは……」と感じることもあり、そうした意味で敬遠したくなる気持ちは分かりますが(笑)。

「人の役に立ちたい」「高齢者と接するのが好き」という思いで介護の仕事を始めた人たちが、日々の忙しさに追われて当初の思いがかなえられないことは、あまりにもったいないですよね。頼れるところはテクノロジーに頼り、そこで生まれた時間と心の余裕を、利用者さんに向ければいい。「業務の効率化」と「心のある介護」は対立するものではなく、同じ流れの中にあるものなのです。

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山崎晴生(やまざき・はるお)
茨城県小美玉市在住。介護支援専門員として現場経験を重ね、地域に根差した支援に取り組む。有限会社シニアライフを設立し、代表取締役として介護事業を展開する中で感じた課題を行政に届けたい、地域の福祉を良くしたいと市議会議員に立候補。現在は小美玉市議会議員としても活動し、介護現場と行政の橋渡し役として「政治と介護を紡ぐ会」副会長も務めている。

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