有識者コラム2024年法改正・報酬改訂を踏まえたICTへの向き合い方 【後編】
2024年の介護保険法改正・介護報酬改定を経て、あらためてICTの在り方を熟慮している居宅介護支援事業所も多いことでしょう。これからの時代を乗り切るために、ケアマネジャーはICTとどのように向き合えばいいのでしょうか。そこで、ケアマネジャーとしての現場経験が豊富で、現在は社会保障政策などの研究に取り組む、淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授にインタビュー。後編となる今回は、ケアマネジャーがICT化のために着手すべきポイントについて伺います。
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「ケアマネジャーこそICTから受ける恩恵は大きい」
AI活用のためケアマネジャーが伸ばすべき能力は?

昨今のAI技術の進化は目を見張ります。介護分野でも便利に活用できることは間違いなく、個人的には大いに期待しているところです。ただ、単に新しいモノやサービスが誕生すればいいわけではありません。それを使う人間側の能力を伸ばすという視点が欠けていれば、真の意味での活用は望めないからです。
ケアマネジャーに問われるのは、AIが提案してきた「ベースとなるケアプラン」に手を加え、いかに個別性のある内容に仕上げられるか――という力量でしょう。当然のことですが、利用者は一人ひとりまったく異なる存在であり、背景や抱えているニーズにも違いがあります。AIのケアプランをそのままコピー&ペーストして複数の利用者に使うようなことは、絶対に避けなければなりません。これからの時代にも活躍できるケアマネジャーであるためには、AIを生かしつつも、適切な内容に調整する能力が求められるのです。
まずは「FAXをやめる」ための旗振り役になろう

しかし、現時点ではAI技術が成熟し切っているわけではありませんし、そもそも介護分野では活用に後ろ向きの人も多いのが現状でしょう。今の段階で、ケアマネジャーはICT化のために何ができるでしょうか。すぐにでも取り組める内容として私が提案したいのは、FAX文化からの卒業を連携先に啓発することです。
国はケアプランデータ連携システムの普及を促そうと一生懸命ですが、それ以前の問題として、介護分野では紙文化がまだまだ強固に残っています。一足飛びにデータ連携を実現することは困難で、まずはメールでのやり取りに慣れることからスタートするのが現実的ではないでしょうか。具体的には、これまでFAXで行ってきた日常のやり取りをメールに置き換えていきます。実績をエクセルでまとめて送付するといったことまで可能になれば、だいぶ状況は変わってくるでしょう。これを牽引できるのは、いろいろな職種・事業所と連携しているケアマネジャーだからこそ。地域のICT化を促進するために、ぜひ旗振り役を担ってください。
厳しい時代だからこそICTの真価を正しく理解して

私の予想では、2027年の介護保険法改正・介護報酬改定は、ケアマネジャーにとって正念場になるはずです。このタイミングで給付サービス抑制や利用者の自己負担増などに舵を切る可能性が高く、利用者間の格差が増大。ケアマネジメントの担い手が増えていない現状に鑑みると、地域の高齢者に「救えない層」が出てくるかもしれません。また、ケアプラン有料化が実現されれば、一部の利用者の権利意識がより強くなり、対応に苦慮するシーンも想定されます。時には利用者の「選別」が必要になりかねない、厳しい時代が到来しつつあると感じています。
問題は山積していますが、人手不足が深刻なケアマネジャーの負担軽減が、引き続き重要なテーマであることは間違いありません。ぜひICTから目を背けず、その価値を正しく理解してもらいたいと思います。どれだけICTが進化・普及したとしても、在宅介護においてケアマネジャーは必要不可欠な存在。その点に自信を持ち、これからの時代を乗り切るために学び続けていきましょう。
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- 結城康博(ゆうき・やすひろ)
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護福祉士やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士の資格も持つ。『介護職がいなくなる―ケアの現場で何が起きているのか』(岩波ブックレット)など著書多数。
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