有識者コラムICTの「真価」を介護現場に届けたい――神奈川県担当者の思い 【前編】
介護現場における効率化・生産性向上には、ICTの導入が不可欠です。2019年度からは「地域医療介護総合確保基金」という国交付金の補助メニューにICT導入支援が位置付けられ、各自治体でさまざまな事業が展開されています。そこで、神奈川県福祉子どもみらい局福祉部高齢福祉課福祉施設グループの中原強さん、林雄大さん、山口一人さん、吉田晴香さん、そして本事業の実務を受託する公益社団法人かながわ福祉サービス振興会の得永真人さんにインタビューを依頼。前編となる今回は、神奈川県におけるICT化の実態、導入した事業者の声、申請時の注意点などについて伺います。
中原:少子高齢化による介護サービスの需要増加、そして介護人材の不足は日本全国で深刻化していますが、神奈川県も例外ではありません。これまでも推進してきた介護業界の生産性向上について、より一層加速させるための一助となっているのが「地域医療介護総合確保基金」によるICT導入支援事業です。神奈川県では2020年度から本事業をスタートさせましたが、介護現場の具体的なニーズを捉えることを目的に、その前年度に独自調査を実施しました。 林:県内の介護サービス施設や事業所にウェブアンケートを実施したところ(回答数1,902件)、約2割が「介護ソフトなどのICTを導入していない」と回答。また、導入をしない理由について尋ねたところ、「初期費用が高い」「ソフトウェアなどを導入しても職員が使えない」「ランニングコストが負担できない」の順に回答数が高く、まずは費用面のハードルを下げることに一定の意義があると確認されました。 林:神奈川県で実施している補助は国が提示している内容と同様で、タブレット端末やスマートフォンといったハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器の購入・設置などにかかる費用の4分の3(一定の要件を満たさない場合は2分の1)をサポートするというものです※。2023年度の交付実績は231事業所で、そのうち居宅介護支援事業所は約11%という結果に。この割合は、例年同程度で推移しています。比較的小規模な事業所が多いことに加え、他施設との連携を果たしてこそICT化のメリットを感じやすいという事業特性から、居宅介護支援事業所は普及の歩みが遅めなのかもしれません。 山口:実際に補助金の交付を受けた事業所からは、「間接業務に関わる時間を約3分の1(月20時間程度)も削減できた」「計算ミスや転記ミスを8割ほど減らせた」「紙ベースの書類が約7~8割不要になった」といった、ICT化の効果を実感する声が多く届いています。書類作成などの手間が省けることは、利用者さんに接するといった直接業務に携わる時間を増やすことにつながります。ICT導入が、よりよい介護の実現に寄与していることは間違いないでしょう。特に人手不足が課題になりやすい県西部、町、村などでは、より積極的な活用をご検討いただければと思います。 得永:実務的な話題になりますが、申請の際には、交付要綱や記載例をしっかりと事前確認することをお勧めします。そもそも補助対象にならない費用を申請してしまう例も散見され、書類づくりの手間だけがかかる結果になってしまうからです。また、担当者が長期休暇などで不在だと、修正をお願いする場合も長い時間を要することに。中には、担当者が退職してしまい、申請したこと自体を誰も把握していないケースすらありました。事業所内でしっかりと情報共有を行い、複数人の目を通してから申請することで、補助を受けるまでがスムーズなことはもちろん、導入後もICTを活用しやすくなるはず。できれば、ICTの担当者は2名以上にすると理想的です。ICT未導入は約2割、費用面がハードルに
ICT化がもたらす「効果」に驚く声が続々
※補助上限額は、職員1人~10人で100万円、職員11人~20人で160万円、職員21人~30人で200万円、職員31人以上で260万円と設定されている。
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