白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.42
新たに示されたケアマネの業務範囲。その線引きが現場に及ぼす影響は(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回は、厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」で新たに示されたケアマネジャーの業務範囲が、ケアマネジャーの働き方や居宅介護支援事業所の運営にどのような影響をもたらすのか、そして、現場のケアマネジャーが改めて心がけるべきことは何かについて、白木先生がアドバイスします。
4つに分類されたケアマネの業務
2024年12月12日、厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(ケアマネジメント検討会)が「中間整理」を公表しました。
「中間整理」では、人材不足に対応するため、他産業・同業他職種に見劣りしない処遇の確保やシニア層が働き続けることができる環境の整備、ケアマネ試験の受験要件の緩和などの必要性も指摘されました。また更新研修については「大幅な負担軽減を図るとともに、あわせてその在り方を検討」する方針も示されました。
そして特に注目すべきは、居宅介護支援事業所で現にケアマネジャーが実施している業務を、厚生労働省が初めて分類した点です。具体的には、「法定業務」「保険外サービスとして対応し得る業務」「他機関につなぐべき業務」「対応困難な業務現在」に仕分けられています。(表参照)
業務の類型 | 主な事例 | |
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①法定業務 |
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②保険外サービスとして対応しうる業務 |
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基本的には市町村が主体となり関係者を含めて地域課題として協議 相談体制の整備や地域の関係者からなる協議の場での検討、生活支援コーディネーターなど既存の仕組み、職能団体による事業化やインフォーマルな資源の活用等 |
③他機関につなぐべき業務 |
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④対応困難な業務 |
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ただ、この線引きが定められたからといって、ケアマネジャーの「シャドーワーク問題」がすべて解決できる、というものではありません。この線引きに従って「業務内なら取り組み、業務外なら取り組まない」と割り切ってしまえるほど、ケアマネジャーの仕事も、在宅介護の現場も、単純なものではありません。業務に取り組むかどうかを判断するには、制度上の線引きに加え、地域性と利用者の個別性を加味しなければなりません。
少し具体例を交えて考えてみましょう。例えば。
「足腰が弱った独居のご利用者。そのお宅のリビングの電球が切れていることがわかった」
こうした場合、電球交換はケアマネの仕事ではないから知らない顔をして帰るという選択をすることはまずないでしょう。真っ暗な部屋で生活するご利用者を放置することは、一般的に考えてもあり得ないことだと思います。
一方で、このケースでは、どのように対応するでしょうか。
「ご利用者が、訪問するたびに郵便箱の確認と、封筒・手紙などの書類の取り出しを求めてくる」
このケースでも、対応する方もいるでしょう。しかし、この状況が常態化することが良いのでしょうか。私たちケアマネジャーが対応をし続けることではなく何らかの対応を検討していく必要があると思います。
「突発」か「常態」か、それが判断のわかれ目
2つのケースの違いは、突発の単発対応か常態的な対応か、ということです。
電球の事例のように、目の前で困っている人が突然現れて、助けられる人は自分しかいない、という状況であれば、それは助けるべきでしょう。業務範囲が、という話ではなく、人として対応をすると思います。しかし、突発的な事象に対応したことについては管理者に報告をするなど事業所内で共有しておきましょう。
そして、その対応が常態化しそうであれば、ケアマネジャーが対応するのではなく、支援者や関係者を交えて全員で対応を検討すべきです。
こうした問題の多くは、ケアマネだけで解決できるものではありません。常態化することが見込まれる場合は、本来、誰が担当すべき業務かを、自治体や地域包括支援センターの関係者も交えて打ち合わせをすべきでしょう。
- 白木 裕子 氏のご紹介
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株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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