白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.41
福祉用具の「選択制」―知っておくべきこと、そして心がけるべきこと(後編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回は、4月から一部の福祉用具で貸与か購入かを選べるようになった制度改正(選択制)に関し、ケアマネジャーが心がけるべきポイントなどについて、白木先生がアドバイスします。
ご利用者にケアマネが説明すべきことは…
なにかと課題をはらんだ「選択制」ですが、既に動き始めているという現実もあります。
この現実の中で、ケアマネジャーがやるべきことは、ご利用者が販売か貸与かを選ぶ際、販売のリスクを十分に説明することです。
具体的には、次のような説明が必要でしょう。
「状態像が変化することで、今、ジャストフィットしている用具も、一カ月後には使いにくくなるかもしれません。改善した場合でも、悪化した場合でも同じです。その場合、貸与であれば、変更は容易です」
また、ご利用者のなかには、「長く使いそうだから、お得な購入にしようか」と、考えてしまう人もいるでしょう。
そんなケースでも「ご利用者の判断だから…」と、あっさり受け入れるのは少し早計です。そうしたご利用者には、身体の状態が変化するたびに用具を買い替えていると購入費がかさむだけでなく、廃棄のための費用もかかり、かえって負担が重くなることも説明した方がいいでしょう。
介護保険の福祉用具とは、単に器具を提供するだけの取り組みではありません。用具の専門職の知見に基づいたサービスの提供こそが、本質なのです。その提供を実現するには、販売がよいのか、それとも貸与がよいのか―。ケアマネジャーは、その視点を忘れずにご利用者への提案を考えてほしいと思います。
「杖」「歩行器」は、貸与が基本
最後に、選択制の対象となった「杖」「多点杖」「歩行器」「固定用スロープ」について、個別に考えてみましょう。
「杖」や「歩行器」は使う人の行動範囲に大きく影響します。それだけに、専門職が適切な支援を継続することは、自立を保ち、重度化を防ぐための「一丁目一番地」といえます。したがって「杖」「多点杖」「歩行器」は、大半のケースで、貸与の方が適切と判断できるのではないでしょうか。
一方、「固定用スロープ」は、特定の段差を解消するために使う場合が多いので、案外、販売を前向きに検討してもいいのかもしれません。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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