白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.39
改めて議論されるケアマネジメントの在り方、向かうべき方向性は?(後編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回は、厚生労働省が立ち上げた「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(ケアマネジメント検討会)の議論を踏まえ、今後のあるべき制度改正の方向性などについて白木先生が考えます。
検討会では「準ケアマネ」の創設なども提案されたが…
もう一つ、大きな議題となっているのが人材確保です。このほど政府が公表した推計によると、2022年度に比べて2025年度なら約2万7千人、2040年度なら約8万3千人、新たにケアマネジャーを確保しなければならないという結果も出ています。ケアマネジャー不足を解消するための施策立案には、もはや一刻の猶予もないという事実を明示したデータと言えます。
こうした状況を踏まえてか、ケアマネジメント検討会のある委員は、ケアマネジメントの中でもルーティン業務のみを担当する「準ケアマネ」ともいえる仕組みを導入することを提案しました。また、ある委員は、介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の合格基準を引き上げることも検討すべきと指摘していました。
「準ケアマネ」については、その成り手の確保が難しいことが見込まれます。また、ケアマネ試験の合格者の1割程度しか現場で仕事をしていない現状を思えば、合格基準の引き下げによって、多くのケアマネジャーが誕生するとも思えません。残念ながら、いずれの案も深刻化するケアマネジャー不足の解決策とはなりえないでしょう。
人材不足解消、書類の徹底簡素化とケアマネの裁量権拡大こそが重要
やはり、人材不足を解消するためには、ケアマネジャーの仕事の魅力そのものを高める施策が不可欠でしょう。
具体的には、書類を徹底的に簡素化すべきです。
また、ケアマネジャーをもっと信頼し、裁量権を拡大する必要もあります。例えば、利用者の状態が多種多様であるにも関わらず、モニタリングについては全国一律で「月一回以上実施」を義務付けるのは、あまりにも現場の現実から乖離しています。利用者によっては1日に何度も訪問しなければいけない人もいれば、半年に一回程度の訪問でも問題ない人もいます。そもそも「月に一回以上」との決まりがあるから、「今月は一回行ったから、これでいい」と考えてしまうケアマネジャーだって、いなくはないのです。特にモニタリングに関する規定ついては、ケアマネの専門性を信頼し、「利用者の状態に応じたモニタリングが実現する」でいいと思うのです。
ケアマネ試験、受験資格は「かつてと同じ内容に」
ケアマネ試験の在り方も再検討すべきでしょう。具体的には受験資格をかつてと同じ内容に戻すべきです。ケアマネジャーの仕事は国家資格がないとできない仕事ではありません。むしろ国家資格より、面接技術を身に着けていると思われる相談援助業務に就いていた人を受験対象者に加えるべきではないでしょうか。そういう意味でもベテランのホームヘルパーなども受験できたかつての受験資格は合理的です。
- 白木 裕子 氏のご紹介
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株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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