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結城教授の深掘り!介護保険 結城教授の深掘り!介護保険

VOL.31基本報酬の大幅アップは期待薄、目指すべきは大規模化

2021/01/08 配信

2021年度の介護報酬改定の改定率は0.7%のプラスとなった。18年度の介護報酬改定(0.54%)を超えるかどうかが現実的な目安と考えていた私としては予想通りの決着だった。

コロナ禍で病院や中小企業の経営悪化に世論の関心が集まっている今、介護分野が注目される機会は少ない。マスコミ報道でも業界紙は別として、介護問題が取り上げられる頻度は、それほど多いとはいえない。

そして、世論の関心が低くければ予算配分も薄くなり、大幅な介護報酬改定率は見込めない。この現状を思えば0.7%の引き上げは、上出来といえる。介護に精通した与党の国会議員らの粘り強い交渉力には敬意を表すべきだろう。

ただ、それでも、過去の改定率の変遷を思えば、今回の改定は「小幅」だったと評価せざるをえない(表1)。例えば、リーマンショック時の09年度の改定率は、過去最高の3%のプラス。約2400億円の新たな財源が介護業界に投入された。それに対して21年度の改定では約840億円の財源が介護業界に配分されるに過ぎない(※注)。

コロナ禍の今、介護業界もリーマンショック以上の深刻な事態に直面している。それを思えば、最低でも2%の引き上げはほしいと考える介護関係者が大半だったのではないか。

いずれにしても、この840億円が各介護サービスに、どのように配分されるかが、直近の注目点だ。

増収は、せいぜい1件あたり数百円ほど?

ケアマネにとっては、居宅介護支援の基本報酬の大幅な引き上げが期待できるのかどうかが、重要なポイントとなる。

結論から言えば、期待できないと判断するのが妥当である。

18年度のように、10単位前後の小幅な基本報酬の引き上げはあるかもしれない。ただ、それによって実現できそうな引き上げは、月ベースで考えれば、1件あたり数百円ほど。30件を担当していても、収入増は1万円にも届かない。

こんな程度の収入増では、居宅介護支援事業所の経営の安定化など、望むべくもない。もちろん、介護業界における「ケアマネ離れ」を食い止めることなど、できるはずがない。

事業所規模を拡大し、加算の積極算定を

基本報酬の引き上げがあまり期待できない以上、居宅介護支援事業所は、別の要素に着目し、今後の経営を考えなければならないだろう。具体的には、「特定事業所加算」の新区分と「委託連携加算(仮称)」、そして、「逓減制」の見直しに着目する必要があると思う。

こう指摘すると、現場のケアマネから「ただでさえ忙しいのに、新しい加算に対応できるはずがない。まして、40人を超えた利用者を担当するなど、夢物語だ!」とのお叱りを受けるかもしれない。

確かに現場のケアマネは忙しい。特に規模が小さな事業所は、新しい加算の要件を満たすなど、とうていできないくらいの多忙さだ。

しかし、改定率0.7%と小幅な引き上げが確定した今、できるだけ加算などを意識した体制を構築していくしか収入アップの道はない。厳しいようだが、それが現実なのだ。

この厳しい現実に適応するために最も有効な方法は、事業所規模の拡大だ。最低でも5人~6人、理想的には10人以上が在職する居宅介護支援事業所とすることで、各種加算の算定や、より多く利用者の受け入れを可能にする体制を整えなければならない。

実際、私が知る居宅介護支援事業所では、ケアマネを20人程度抱えることで、積極的な加算取得を実現し、収益を増大させた。当然ながら、各ケアマネの給与も平均的な額に比べれば高めで、そして安定している。

求められる職人気質からの脱却

事業所の大規模化を考える上で問題になるのは、ケアマネの気質だ。どうも、ケアマネにはサラリーマン的気質より、職人気質の人が多いように思えるのだ。たとえば3~4人が働く居宅介護支援事業所のケアマネでも、相互の業務に立ち入ることはなく、それぞれが独立型ケアマネのようなスタイルで働いているケースが珍しくない。

ケアマネがそんな姿勢のままでは、事業所の規模を大きくしても、十分なスケールメリットは得られない。というより、事業所の規模を大きくすること自体が難しい。

国家財政の厳しさを思えば、今後も、思い切った介護保険財源の拡大は行われないだろう。今回のように、「わずかなプラスを勝ち取って御の字」というような、厳しい改定が続くと思われる。

それだけに、中長期的に経営を安定させるには、事業所の大規模化が不可欠だ。そして大規模化を実現するためには、現場で働くケアマネが“一人親方の職人”という意識を捨て、組織でも業務をこなせる柔軟な専門職という意識を持たねばならない。

むろん、「大幅な収入増は求めない。独立型ケアマネとして、職人スタイルを貫く」という選択肢もあり得る。しかし、このようなスタイルの事業所ばかりでは、ケアマネ不足が解消されるとは到底思えない。

今回の改定を機に、職人から組織の専門職に意識を変革するケアマネが増えることを期待したい。そして、居宅介護支援事業所の大規模化が進むことも期待したい。

※注:2009年度の介護保険の総費用を約8兆円、21年度の介護保険の総費用を約12兆円と仮定した数字。

結城 康博(ゆうき・やすひろ)
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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