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おむつ実践講座 症状別の尿もれ対策方法をご紹介します。

認知症が進行し、おむつ交換を拒否するAさん

対象者のプロフィール

【Aさん/80才代/女性/要介護3/兵庫県在住】
Aさんは、息子さんのご家族と同居しています。お一人で歩くこともできますが、認知症が進行しており、トイレへは誘導が必要です。排尿後、おむつが汚れても交換をさせてくれません。衣類や座布団が濡れていても「汗をかいただけ」と言って交換しないために、お部屋中、尿のニオイがしています。

先日も、ヘルパーさんに暴言を吐き、別のヘルパーさんが来るようになってしまいました。お世話をしているご家族も「おむつ」と言わずに「紙パンツ」と話すなど、工夫をしていますが、汚れたおむつの交換拒否が続いています。

ご家族は、現在使用しているうす型のパンツタイプおむつがサラッとしているので、汚れた感覚がなく交換をしないのではないか、もっとおむつが濡れた感じが、わかったほうがいいのではないかと考えています。

相談内容

■認知症のため、パンツタイプおむつが汚れていることを認めない。
■おむつの交換をすすめても、拒否し、暴言を吐く。
■おむつの交換をしないために、部屋中に尿のニオイがする。
■すんなりとおむつを交換してもらうための方法を探している。

助言内容・対応方法とその結果

メンタル面のケア

Aさんのご家族は、認知症のお母様の介護に疲れている様子です。排泄のお世話をしてくれるヘルパーさんにも暴言を吐き、ヘルパーさんが交代するなど迷惑をかけているといった思いでいっぱいです。まず、ご家族へのメンタル面のケアが必要です。

ご家族だけで、がんばるのではなく、ケアマネさん、ヘルパーさんの力を借りて、介護することが大事であることをお話しました。「経験豊富なヘルパーさんやケアマネさんはたくさんの知恵を持っています」とお話すると、ご相談をくれたお嫁さんも安心した様子でした。

ご家族なりに「おむつ」と言わずに「紙パンツ」と言っている工夫も、「それは、いいですね」と、まずは認めることからアドバイスを始めました。

身体状況の確認

Aさんは、長い時間濡れた状態のおむつを装着しています。おむつの中の環境は、お肌に大きく影響します。おむつの吸収量をオーバーした状態で座ったりすると、体圧がかかって尿が後戻りし、衣類や座布団まで濡らしてしまうことがあります。

また、戻った尿がお肌に長時間接触することでお肌のトラブルの原因となることもあります。おむつの交換を拒否されるとのことなので、入浴時などにお尻や性器周辺に肌トラブルがないか必ず確認が必要です。

アドバイスと対応

【トイレ誘導とおむつ交換】
認知症の方の場合は、「いやだ」「恥かしい」「やめてくれ」とおむつ交換を拒否しているわけです。過去におむつの交換を通して、お母様の自尊心を傷つける言動がなかったか、何かストレスになっていることはないかを考える必要があります。

トイレの場所がわからないのであれば、トイレのドアに大きく「便所」「手洗い」と書いた紙を貼るのもいいでしょう。言葉の意味がわからない場合は普段使う言葉を書きましょう。お一人で歩くこともできますので、おむつの交換は、お部屋の中ではなく、トイレに誘導しておこなうことが望ましいです。

言語でのコミュニケーションが難しくなっているようであれば、「そわそわする」「お腹のところを触る」などの動きで、排尿のタイミングを知らせることがありますので、それをよく観察して誘導することが大切です。
また、お母様が「汗をかいた」と言っているのであれば、「汗をかいたままだと風邪を引くから着替えましょう」とお母様の言葉に寄り添ってみるのも良いかもしれません。

また、トイレで交換が必要になった場合も、「ちょっとつかまっていてね」などと声をかけ、さりげなく安全を確認して、後ろから交換します。面と向かってパンツを下ろされるのは、誰でも抵抗があります。

【最適なおむつ選びと使い方】
認知症があり、お一人で歩いてトイレに行ってしまうことが想定される方の場合は、やわらかく下着に近いはき心地で違和感がなく、上げ下げしやすいパンツタイプおむつを一枚でお使いになることをおすすめします。

ゴワゴワして肌ざわりが悪かったり、尿とりパッドを組み合せることで違和感があり、おむつの中に手を入れてしまったり、破いてしまったりすることもあります。また、尿とりパッドを水洗トイレに流してしまうこともあります。Aさんのように、なかなかおむつ交換ができない場合は、長時間使うことが考えられますので、尿吸収量の多いパンツタイプおむつを選ぶことが必要です。

尿吸収量が少ないと、吸収量をオーバーした状態で座ったりして、体圧がかかり、ズボンや座布団に染み出してしまうことがあります。交換の時に、ズボンを脱がさなければいけないことを考えると、「リリーフ テープ式にもなるパンツ」のような2WAYパンツをテープ式の状態で、後ろから股間を通し、手早く当てる方法もあります。

【ニオイ対策】
尿のニオイは、消臭効果の高いおむつの使用をすることで、長時間交換ができなくても解消できるかもしれません。また、衣類は消臭・除菌効果のある漂白剤入りの洗剤でお洗濯します。
座布団などお洗濯が難しいものには、消臭・除菌効果があり繊維に直接スプレーができる消臭剤を上手に使いましょう。

結果

比較的、お嫁さんのお話は聞いてくれるので、さりげなく言葉がけをするようにしていただきました。お嫁さん自身も今までは、自分もどうにかしなければと力が入っていました。トイレで「リリーフ テープ式にもなるパンツ」をテープ式にして使用してみたところ、ズボンを脱がせたりする手間がなく短時間で交換することができ、気が楽になったそうです。

Aさんにとっても苦痛な時間が短くなったせいか、機嫌の良い時間を見計らって交換をさせてくれるようになりました。

ケアマネジャーの皆さんへのワンポイントアドバイス

認知症の方の場合は、ご気分や体調にムラがあったりしますので、状態に合わせた排泄ケアを心掛けます。また、認知症の方の排泄に関してのお悩みは、「尿とりパッドをトイレに流してしまう」「おむつの中に手を入れてしまう」「おむつのテープを外してしまう」「交換を拒否する」など千差万別です。

おむつの中の不快感や違和感からそのような行動につながっているケースが多いので、おむつの中をより快適な環境に保つことが大切です。通気性のあるおむつを使用したり、尿とりパッドの重ね使いをしないことはもちろんですが、尿とりパッドの使用をやめ、パンツタイプおむつ1枚で下着に近い状態にしてあげることもよいでしょう。

ご家族、ご利用者様の双方の心身共に健康で過ごせるようアドバイスを行なうことが大切です。まずは、ご家族がストレスをためこまないように、がんばり過ぎないことも大切であることを伝えましょう。
カンファレンスの場でいろいろな事例などを取り上げ、仲間からたくさんのヒントをもらうことも、問題解決につながる近道かもしれません。

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